2013年4月18日木曜日

アブラコウモリ・・・。

 少し前のことですが、社屋に侵入し衰弱した「アブラコウモリ」の幼獣を一時的に保護しました。

 日本では、全てのコウモリが鳥獣保護法の対象になっていて、飼うことも捕獲することもできない生き物です。

 当然、熊本県でもアブラコウモリを長期間保護することは県条例で禁止されていますが、あまりにも弱っていたので、放獣する前に餌を与えてみました。

 餌にはミルワームという釣り等で使われている虫を食べさせてみたんですが、いい食べっぷりでした。

 初めてアブラコウモリの採餌行動を見ましたが意外と可愛い仕草でした。


 会社から帰る夕方過ぎに、薄暗くて静かな壁際に止まらせておいたら、翌朝にはいなくなっていました。無事すみかに飛び立ったようです。

 私たちは日頃から生物関連の調査・研究に携わっている経験から生き物に接した際の取り扱いを熟知していますが、一般的には野生動物には未知の病原体や寄生虫が付着していないとも限りません。

 日頃よく目にしている生き物であっても野生生物を扱う際には、むやみに素手でさわったり捕まえたりするようなことは慎みましょう。


文責 KN

2013年4月16日火曜日

円形分水

 先週の日曜日に友人家族とアケボノツツジを求めて五ヶ瀬川の二上山に行ってきました。

 昨年よりも開花が早いと言われていましたが、先々週の爆弾低気圧とその後の気温低下で、せっかく咲いていた花が散り、その後の蕾も開花がやや遅れており、3分咲きといったところでした。


ツクシアケボノツツジ
 
 












帰宅途中で通潤橋に立ち寄りましたが、山都町方面ではもう代掻きが始まっており、用水路は満杯状態で流れていました。


通潤橋
 














山都町などのような山間地方の多くは棚田であり、水源地が限られているため「水利権」についてはとても厳格と聞いています。時には血を流し長い間「水争い」を経て決められてきた「慣行水利権」。それを公正に実施する水の分配システムの一つが「円形分水」ではないでしょうか。

 ①は、通潤橋に送水する取水口にもなっている「円形分水」です。内円外周に7:3の比率になるように区分けが施されており、内円から溢れた水はその比率によって外円内の水路をとおりそれぞれの用水路へ導かれています。


①熊本県山都町にある円形分水
 













 
 ②は、竹田市にある円形分水です。最も配水効率の良い地点にいくつかの源流から集水し、再び各水田に配水するシステムです。側面に穴(合計20個)が7:8:5の3等分に分けられており、その穴の数によって外円内の水路を通り3つの用水路へ導かれます。また、4箇所の穴は開口幅を調整できるようになており、水量の微調整が可能で機能的には優れていると思えます。


②大分県竹田市にある円形分水

















 どちらの円形分水も、何故この場所に決めたかの逸話や当時の測量技術、導水路の難工事の歴史を知ると、先人の知恵の凄さに感動です。



文責KO

 

 

2013年4月11日木曜日

登山道脇のブチサンショウウオ

















44日、山鹿市のとある山中に出かけました。
うっそうとした林の中を流れる小さな枝沢をのぞいてみると・・・。 
ブチサンショウウオの幼生


















5cmくらいの長さのドジョウみたいな生き物がいます。
実はこれ、ブチサンショウウオの幼生(子供)です。

カエルでいうところのオタマジャクシで、カエルと同じく、子供のときは水中で生活し、大人になると姿を変えて陸上で生活する両生類の仲間です。

 沢にある大きめの石をはいで見ると、今度は15cmくらいのナスビ色の生き物が・・・。

ブチサンショウウオの成体


















これがブチサンショウウオの成体(大人)です。
繁殖のために沢の水中に入って、卵を産みにくる雌(メス)を待っている雄(オス)です。
非繁殖期の成体は、沢の周りの林床で、落ち葉や石の下に潜んでおり、しかも夜行性のため、めったに姿を見ることができません。また、カエルのように鳴くこともないため、そこに棲んでいることに気付かれることなく、森林伐採や道路工事などによって、棲み家を奪われやすい生き物です。

タゴガエル





















この日は、タゴガエルも繁殖のために水中に入っていました。
こちらは「グッグッ、ゴッゴッ・・・」と鳴いてくれるので、気付くことができました。

登山道とすぐ脇の枝沢


















それにしても、これらの生き物は目立ちません。
ここでは登山道を多くの登山客が行き交う中、すぐ脇の沢でひっそりとこれらの生き物が生活しています。
こうした生き物のことを知って、自然の楽しみ方がもっと増えるといいですね。


文責AH

2013年4月8日月曜日

仰烏帽子山の福寿草 (幸せを招く花・・・)



少し前の話しですが、2月の下旬「九開山登り隊」の月例登山に参加してきました。

まだまだ朝夕冷え込みが厳しい九州脊梁山地にある「仰烏帽子山(ノケエボシヤマ)」です。

仰烏帽子山は、熊本県でも有数の「福寿草(フクジュソウ)」の自生地として有名な山です。

写真 仰烏帽子山山頂


















登山口から仰烏帽子山山頂まで3040分程で到着することができました。

山頂では、360°の風景を楽しめます。

南は桜島や霧島連山、北は普賢岳など素晴らしい眺望を堪能できました。



今回の登山の目的は、幸福を招く花・・・フクジュソウの鑑賞です。


写真 フクジュソウ













仰烏帽子山山頂から椎葉谷に向かって尾根を歩くこと130分。

通称「仏石」と呼ばれる地がフクジュソウの一大自生地です。

あたり一面に、飴色に輝くフクジュソウが咲き誇っていました。



ところで、日本ではフクジュソウって4種類が確認されているって知ってましたか。






それでは、熊本県内のフクジュソウって・・・?



いまのところ、県内全てのフクジュソウ自生地の調査が進んでいるわけではないんですが、花の総苞片(萼片)の長さが明らかに花弁よりも短いことをもとに県内のものはすべて「ミチノクフクジュソウ」と考えられているようです。


 




















このブログがアップされる時にはもうフクジュソウの花を見ることはできませんが、是非来年の早春期(2月初旬~3月上旬)に飴色に光り輝くミチノクフクジュソウを見に行かれてはいかがですか。

文責 KN


2013年4月3日水曜日

シカの食害対策


先月の31日に登山してきました。
祖母山登山の下見ということで、緩木山・越敷岳の縦走でした。
縦走も終り、下山して林道にポンと出たところで異様な風景に出会いました。

山の斜面に、1.5m程の白い筒状のプラスチックがずらりと立ち並んでいました。

 














 『なに?これ?』

筒の中をのぞいて見るとヒノキの幼木でした。
どうやら鹿の食害防止のためのシェルターのようです。
金網で囲ったものは良く見ますが白い筒は始めて見ました。

まるで、アーリントン墓地を髣髴とさせるような光景ですね。
食害防止には種々のシェルターが開発されていますが、
ヒノキやスギ等は穂先を食べられると用材として致命傷です。
1.5mの高さで良いのか、筒の中での成長度合いなど、課題はまだまだ多いようです。
















文責KO

クロツラヘラサギのデコイを設置

平成24124日(火)、自然環境保全の一環として、日本野鳥の会熊本県支部の方々とご一緒に、クロツラヘラサギのデコイ(模型)を設置してきました。場所は多くの野鳥の生息地となっている八代海氷川河口で、新幹線橋梁による影響を緩和させるのが目的です。
デコイが多くの仲間たちを誘引してくれることを祈るばかりです。 
デコイ設置状況(背後は新幹線橋梁)写真
デコイ設置状況(背後は新幹線橋梁)

休息ポーズのデコイ



採餌ポーズのデコイ
 
 

 

 

周辺の干潟には多くのシギ・チドリ類も生息しており、日本を代表する塩性湿地です。
ハマシギとダイゼンの群れ(近隣の砂川河口にて)写真
ハマシギとダイゼンの群れ(近隣の砂川河口にて)















一方で、近隣の大野川河口には、外来植物のスパルティナ・アルテルニフロラが干潟に定着しており、年々群落規模が大きくなっています。このままでは、干潟の草原化やムツゴロウ・ヤマトオサガニなどの生息環境消失が懸念され、一刻も早い駆除への取り組みが望まれます。

大野川河口のスパルティナ・アルテルニフロラ写真
大野川河口のスパルティナ・アルテルニフロラ

文責AH